W-Nikkor 2.5cm f4.0
 

Lens Data

Lens Unit

Lens Photo

レンズ構成 4群4枚
画角:80.5°
最短撮影距離 3.3ft(目盛は3.5ftまで)
フィルター径 ニコンマウント:専用フードにシリーズVII落とし込み、
ライカマウント:34.5mm-52mmステップアップリングに52mmフィルター
最小絞り:f22
発売 1953年11月


Lens Impression

ニコンSマウントの製造本数が2,500本、ライカマウントは数百本ともいわれる少数生産の希少な超広角レンズです。
原型となっているのはCarl ZeissのトポゴンTopogon 2.5cm f4で、下の構成図を見てもかなり近似したレンズであることがうかがえます。

Topogon 2.5cm f4 Hypergon Celor

さらにその基となったレンズが1900年に独ゲルツ社で開発された2群2枚の驚異的超広角レンズハイペルゴンHypergon(上図)です。
設計者は特許上(US706650)ではハイペルゴンはCarl Paul Goerzと社主の名前が記載されていますが,、実際はダゴールを設計したエミール・フォン・フーフ(Emil von Hoegh 1865--1915)と言われています。
フーフは名前にvonが付いていることでも想像できるようにデンマーク貴族の末裔ですが、Carl Zeissのルドルフ博士が発明したアナスティグマートレンズの特徴を3枚貼り合わせで実現し、それを前後に配置してさらに高性能にしたダゴールの原型をCarl Zeiss社に売り込んだものの採用されず、それで1892年設立6年目という若い会社であったゲルツ社に持ち込み採用されて入社したといういきさつを持っています。ダゴール、ハイペルゴンを設計した後、4群4枚の対称型レンズCelorツェロール(上図)を開発し、これは現在ダイアリート型と言われているもののオリジナルで、本来はツェロール型と呼ぶべきなのですが、なぜかあまり普及はしていません。

ハイペルゴンは非常に画角(135度)が広い上、光線角度に大きく影響される歪曲収差、像面湾曲、倍率色収差などが著しく小さいという優れた性質を持っていましたが、わずか2枚の凸レンズのみで構成されているため口径に左右される、球面収差と軸上色収差が補正できないという、構造的な欠陥を持っていました。そのため開放f値がf22という非常に限られた口径にせざるを得ませんでした。(ハイペルゴンは1939年ごろツァイスで2.5cmf8という小型で明るい試作品も作られていますが、、、)

トポゴンを開発したロベルト・リヒテル(Robert Richter 、1886年 - 1956年2月12日)は1914年にフォクトレンダー社でそのキャリアをスタートさせますが、1923年にゲルツ社に転職し、1927年にゲルツ社がツァイスに吸収合併される際ツァイスに移りました。彼はハイペルゴンに1対の凹レンズを加えることで収差の改善に成功し、1933年に画角100度f値6.3というレンズを開発(US2031792)します。中央の向かい合った凹レンズを一つにまとめて見れば、このレンズ構成は「トリプレット」の凸凹凸の性質を持ち、基本5収差の補正が可能であることが分かりますね。
緊迫した世界情勢のもと、航空写真、地図作成用として完成が喜ばれたのでしょう。このレンズは1930年代末にトポゴンTopogon 2.5cm f4.5として製品化されますが、f4.5はごくわずか(数十本)しか製造されず、のちにf4となって販売されます.

W-Nikkor 2.5cm f4は日本光学の東秀夫により昭和28年(1953)に設計され、翌年から販売されました。レンズ構成図を眺めると全くのデッドコピーのようにも見えますが、細部はきめ細かく改善されており、実写するとその違いがよく分かります。特に周辺光量はかなり改善されており、普段使いのレンズとしてもとても使いやすくなっています。また画面周辺部でも「広角っぽい?」画面の湾曲のようなものは全く感じられず、本当に超広角なのかどうか疑ってしまうようなすっきりとした直線が得られることも特筆に値すべきだと感じました。


 Photos with W-Nikkor 2.5cm f4  
 
2020
Kamakura
(鎌倉)

レンズ仲間と鎌倉を撮影散歩しました。前日には下見を兼ねて一人で北鎌倉から鎌倉まで源氏山公園経由で軽いハイキング。北鎌倉の東慶寺はこの時期は無料のようですが、本堂の前の門と塀が無くなっていたのには驚きました。このままなのか、立て直すのか不明です。浄智寺より奥は歩く人の数も減り、さほどきつくない昇り降りもとても気持ちの良いコースです。銭洗い弁天あまりに人が多くて、とても写真どころではありませんでした。しかも若いカップルばかりでした。
次の日は鎌倉駅を降りて仲間二人とすぐにタクシーで瑞泉寺に向かいます。まずは上るところまで行ってしまって、そこからゆるゆると歩いて降りようという算段です。朝早い瑞泉寺は訪問者も少なくゆったりできました。

ニッコールの描写は作例を見ていただければと思いますが、とてもはっきりとクリアでかつて一眼レフにポジフィルムを入れて撮影していたころを思い出させるような鮮鋭さでした。

2020
Summer cloud
(夏の雲 近所)

朝8時ころに近所を散歩していたらとても印象的な夏の雲に遭遇しました。まだ気温が高くなっていないのにこれだけのモクモクが出来るとはかなり大気が不安定なのでしょうか?それにしてもニッコール2.5cmの描写はまるで雲が迫ってくるようです。

 
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